2011年01月13日

致死率100%の風土病?カラアザールは原虫感染症です。

致死率100%の風土病が猛威をふるっていると言うヤフートピックスのタイトルにびっくりして、

もしかして「エボラ・ザイール」の超強力な毒性の新型ウイルスが出たのかって思ったら、何だ、カラアザールじゃん、ってちょっと拍子抜け。

いえ、怖い病気が出てほしいと思ってるわけじゃないんだけど、「ホットゾーン」とか好んで読んでいたのでそっちかと思った。

カラアザール(内蔵型リーシュマニア症)なら治療薬あったはずでは、とか思ったら・・・。


致死率100%の風土病猛威=独立歓喜の陰で人道危機―スーダン南部

時事通信 1月13日(木)5時49分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110113-00000027-jij-int

 【ジュバ(スーダン南部)時事】スーダンからの独立の是非を問う住民投票が15日まで実施されている南部で、治療しなければ致死率がほぼ100%の風土病、内臓リーシュマニア症(カラアザール)が8年ぶりに大流行している。医療関係者は「住民投票の歓喜の陰で内戦に伴う人道危機は続いている」と警告している。
 カラアザールは、寄生虫を媒介するサシチョウバエを介して感染する熱帯病で、スーダンでは南部ナイル川沿いの州など一部地域で発症。マラリアなどとは異なり、地域的に限定された病気のため研究が不十分で、「顧みられない病気」とも呼ばれる。
 8年前の流行後、免疫のない世代が増えたほか、天候の影響もあって昨年末から大流行。南北内戦で発症地域に十分な医療施設や医師が存在せず、死者数など実態は不明だが、国際緊急医療援助団体「国境なき医師団」が昨年治療した患者数は、前年比8倍超の約2050人に上っている。 


カラアザールは感染すると肝臓や脾臓が腫れあがってお腹がぽっこりでるだけでなく、リーシュマニア症の特徴でもある全身に脈絡なく出現する腫瘤の性で恐ろしい外見になることもある。

「Leishmania Donovani」とじゃ「Kala-azar」でGoogle画像検索して見たらよい。

(検索してみたらかなりショッキングな画像がトップに並んでいたので食事前や食事中に居間で検索するのはやめておきましょう)

サシバエ(蚊と思ったらいい)の一種の消化管内で繁殖する原虫Leishmania Donovani(ドノバン・リーシュマニア)が原因で、これに感染したサシバエに血を吸われるときに感染する。


マラリアで代表される原虫ってのはバクテリアではなくて寄生虫に分類されるのだけど、サイズ的なことから言えばもうほとんど細菌サイズ。

外敵を捕食して消化する白血球の代表であるマクロファージに捕食されて、その中でばんばか増える。

増えて細胞がパンパンになったら破裂して出てくるからそれを他の元気なマクロファージたちが食べる。

げんきなマクロファージに捕食されて、その中でばんばか増えると破裂して・・・

リーシュマニア・ドノバニの感染スタイルは以下のアニメで

http://www.youtube.com/watch?v=8KOV_v65CMw


治療しなければ100%致死、それは確かにその通りで、間違いなく恐ろしい病気だ。

これも私、医学部の寄生虫学講座でも習ったのだが、医学部に入る前に小学校4年生の時に知っていた。

医学研究団の科学者が未開の土地に行って風土病の研究と治療をしながら猛獣調査もする、みたいな少年向けの本があって、それで読んだ。


カラアザールという恐ろしい病気のイメージは10歳の少年の脳裏に強烈に焼き付いた。

「カラアザールの流行している地域にだけは旅行しないようにしよう、日本人でよかった。」

なんてことを思いながら本を読みつつ、牛乳飲みながら、かりんとうをポリポリ食べてたのを今思い出した。←深刻さが薄い(^^ゞ


脱線したから戻すと、カラアザール、早い段階で治療すればほぼ治すことができる。

ドノバン・リーシュマニアに効果的な治療薬はいくつか知られているからである。


ただ、問題は、その治療薬の価格が高いことだ。

もっとも安全でかつ効果的な特効薬は、治療に必要な分を使うと薬剤費だけで2000ドル以上するという。

2000ドル(16万円)以上というのは、日本人からしてみれば、それで命が助かるなら安いものだ、と思うかもしれないけど、流行地の人からすると一生かかっても稼げないかもしれない金額だ。


一方、安価な昔から使われている薬は副作用が強く、毒を以て毒を制す的な薬で、人によっては死ぬこともあるらしい。

(使ったことないので、どんな副作用かは詳しくは知らない、すみません。)

そしてこちらでも薬剤費で5000円はするとのことで、スーダンの地方の貧困家庭では逆立ちしたって出せない金額だろう。


どうしてそんなに薬代が高いのかというと、先進国では流行していない病気だからである。

流行地を訪れる先進国の人などからの小さな需要はあるので作り続けてはいるが、製薬会社としては赤字で奉仕している状態だと思われる。

作ってもそれほど売れない薬(需要はあってもその人たちにお金がない薬)、製薬会社には大量生産して薬価を下げるメリットがないからである。

それで、薬は現地の貧乏な患者に投与されることはない。

助かる命は今でもどんどん失われているのである。


だから、致死率100%なんていうこういう「釣りな」タイトルをつけても、ヤフートピックス、許す。

こういう「無視されている」風土病の存在に注意を喚起して、我々がそれを何とかしたいと思う気持ちになるのはいいことかもしれないから。


リーシュマニアに注意喚起するYoutube動画、最後のあたりにショッキングな患者画像が出るので注意。
http://www.youtube.com/watch?v=q1_sfpau5yo

皮膚リーシュマニア症の画像のスライドショー これは医療関係者以外にはお勧めしない。
http://www.youtube.com/watch?v=pCRW23BPuZI&NR=1


風土病に関する情報と寄付のことなら以下を参照。

 ⇒国境なき医師団 あなたの3000円で100人を救いませんか?

もちろん、他にも寄付する先はいろいろあるけれども、現場に一番近い団体の一つだと思う。



同じカテゴリー(感染症)の記事
 食肉卸業者と焼き肉チェーン店、そして厚生労働省の責任 (2011-05-07 21:16)
 生食用の牛肉は流通していないという前提を知らなかった。 (2011-05-04 15:54)
 溶血性尿毒症症候群(HUS)発症は防げないのか? (2011-04-30 14:43)
 タミフル投与患者8%に耐性ウイルス出現! (2011-01-20 21:35)
 インフルエンザワクチンの3つの真実 (2011-01-14 19:11)
 国産エイズ予防ワクチンにすごく期待してます。 (2011-01-06 23:12)

この記事へのコメント
初めまして。
すごくわかりやすい解説ありがとうございます。
独身の頃、バングラデシュで医療宣教している医師の所へボランティアで行きましたが、その時、初めて耳にした病気がカラアザールで、蚊に刺されないよう気を付けていたことなど思い出しました。
治療できる病気なのに、薬を製造しないことがそういうことなのか・・・・と、今頃わかりました。何気なく検索したカラアザールで、国境なき医師団にも寄付できました。
ドンノバット(ベンガル語:ありがとうございます)
Posted by となりのトロロ at 2012年04月28日 00:00
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
致死率100%の風土病?カラアザールは原虫感染症です。
    コメント(1)