2010年12月25日

小児への心臓移植にこわごわ足を進める日本の移植医療


心臓移植の恩恵にあずかるべき先天性小児心臓疾患患者のほとんどが、現実には日本国内での移植を期待できない。

重症化すれば海外での心臓移植を余儀なくされているのが日本の心臓移植の現状だ。

海外では30年以上にわたって移植手術が行われてきたこの分野で、ようやく少しずつその門戸が広がろうとしている。


ニュースの記述内容がどうもわかりにくいが、わかりやすく書くとこうである。

現在、日本で心臓移植手術を許可されているのは9つの病院で、ただし、15歳未満の心臓移植手術が可能なのは東大病院などの全国でたった3つの病院だけとされていた。

その年齢制限を、11歳未満にまで切り下げる。それだけのこと。


つまり、心臓移植可能な施設が9つの施設であることは変更しないが、11歳未満の患者への心臓移植は3つの施設のみ、東大病院、阪大病院、国立循環器病研究センターのみで可能としたわけだ。

患者にとってよいことではある。


11歳以上の心臓移植、全施設で可能に 移植関係学会合同委が発表

産経新聞 12月24日(金)23時2分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101224-00000629-san-soci
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/living/health/478014/

 移植関係学会合同委員会は24日、これまで「15歳未満」への心臓移植が可能としていた東京大病院など3施設の対象年齢を「11歳未満」に引き下げると発表した。15歳以上に心臓移植できる施設は東大病院など3施設を含め計9施設あるが、今後はいずれの施設でも11歳以上の患者への心臓移植が可能になる。

 移植施設をめぐっては、臓器移植法改正にあたって同委員会が15歳未満の心臓移植を3施設に限定。しかし、日本小児循環器学会が「技術的に問題ない」として、年齢設定を引き下げるよう要請していた。


海外の心臓移植手術に比べれば、周回遅れどころか、20年も30年も後塵を拝していた日本の心臓移植。

しかし、日本の心臓移植手術はスタートしたときは世界で30例目となる最先端のスタートを切っている。

1968年8月8日、東大でも阪大でもなく、和田寿郎を主宰とする札幌医科大学胸部外科チームが日本初の心臓移植手術を実施している。

これは世界で30例目となる手術で、日本の外科技術の先進性を世界に示すものになる・・・はずであった。


心臓移植手術に関わった麻酔科医の告発により、和田チームの行動には「移植最優先で患者の命は後回し」としか思えないものがあるとされる。

初めに心臓移植ありきで、ドナーは助かるはずの命を殺されたのではないか?レシピエントも心臓移植ではなくて弁置換術で治ったのではないかと言われる。

もしもそれが事実ならば、二人の青年の命を和田チームが功名心のために奪った殺人罪と言ってもいいのではないかということで、訴えられている。


・・・しかし、基本的には関係者の告発のみで、物的証拠がない。

手術標本が行方不明になった上に入れ変えられていたり、ドナーの死体が問題になる前に火葬に付されていたり、限りなく疑わしい話も出回っているが、真相はやぶの中なのだが、これは大いに疑義を生んだ。

証人として召喚された著名な外科医たちの意見も何を気遣ってか終始、きわめて曖昧であった。

けっきょく、物的証拠がないと言うことで告発された殺人罪、業務上過失致死罪、死体損壊罪のすべてで嫌疑不十分で不起訴となった。


この問題は日本中を揺るがせた。

証拠不十分、証人の意見が対立するということで不問となった押尾守の保護者義務遺棄致死罪の騒ぎどころではない。

このために、心臓に限らず、脳死移植手術そのものが医者の功名心によってなされる不要な医療ではないかという意見が力を増していった。

移植をするべきだという外科医がいても、その医者が有名であればある程、あるいは注目される地位にあればある程、反対する団体から毎日病院前でデモをされて黙りこまざるを得ない状況もあった。

これは日本の外科医に取ってと言うよりも、脳死個体からの臓器移植を必要とする患者たちにとって不幸な世論の流れでしかなかったと私は思う。


1990年代に成立した臓器移植法案によって、脳死個体からの移植が日本でもようやく認められる。

しかし、再び世論に突っ込まれるような問題点が絶対ないようにしたいと言う医療側、行政側の思いから、脳死移植が可能な施設は極めて少ないものに限定された。

その結果の一つが年齢制限でもある。


現実に、15歳未満の移植が必要な先天性心疾患の患者のほとんどが今でも数千万円から数億円というお金を用意してアメリカにわたって心臓移植を受けている。

これはアメリカ国民の患者の移植の機会を減らすことにもつながっていて、国際的な問題にもなっている。


可能であるなら国内での小児の心臓移植手術をもっと適応を広げたい、そう思う医療家や患者の気持ちが及び腰の委員会の腰を押した大事な一歩ではある。

その発表がクリスマスイブになされたと言うのも、狙ってのことなのか偶然なのかは分からないが、小さな祝福と考えていいのではないだろうか。


ちなみに、ローマ法皇が

「人間の死とは脳死であって、心臓死ではない。」

そう認めて明確に宣言したのは、20年以上前の1980年代のことである。



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